読書記録「キャッチャー・イン・ザ・ライ」
翻訳ブーム、続いています。
村上春樹訳 キャッチャー・イン・ザ・ライ、読了しました。
学生の頃、文学好きなら読むでしょとりあえず、って感じで読んだ本の一冊です。
そのときに読んだのはこっち。野崎訳でした。
それ以来の再会。
前半はホールデンの気分に右往左往されてちょっとつらかったけど、
後半は文体の力にひっばられて、すいすいっと読めました。
続けてこちらも読みました。翻訳夜話2 サリンジャー戦記 。
「ホールデンは何の病気だったのか、とか、最後はどこにいたのか、とか、一人称だから全てが本当とも思えない、とか、謎はいろいろあって、本当はどうだったんだろう?っていう謎解きは、楽しみでもある。でも謎解きをしつくすと、本当はどうだったのか、は、実はどうでもいい些末なことになる。その後に、自分がこういうものを受け取ったよ」
というプロセスを見せてくれている本でした。
この本の最後に収録されている柴田元幸さん作『Call me Holden』が、
ものすごくよかったのです。
ホールデンのその後、みたいな話。
サリンジャーが書いたのかと錯覚しました。
私が思う「よい作品」は、
想像力がぐんぐん膨らむ豊かな世界が描かれていて、
底辺には「よい物語」が流れているもの。
よい、というのは、善だったり、美だったり、真だったり、いろいろです。
どう読むかは読者次第。
私がこの作品から読み取ったのは、
『人生は前に進む時間軸では語りきれない』ということ。
一般的には『少年期の喪失の切なさ』の物語として読まれているみたいです。
「本を読む」というのは、
自分がどんな物語を読み取るか、ということでもあるのですね。